Insight Inside

とあるコンサルタントの雑記帳

働き方改革の適切な処方とは?

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2019年、世間では働き方改革が積極的に進められている。私が現在働いているファームにおいても漏れなく働き方改革と銘打って労働時間の短縮を目指して様々な打ち手が実行されている。また、前職においても働き方改革とは呼ばれていなかったものの継続的な改善の一環として既存業務に係る所用時間の短縮を目指して、業務の改善を行なっていた。

 

さて、労働時間であるが、これは健康的な範囲に収まるようにすることが原理原則と思う。以前は朝方まで働くこともあったし、少なくとも12時まで働くということが普通であった。

しかしながら、これでは体調を崩す人も出てくるし、なにより長期的な目線での自己能力開発に時間を割くことが難しい。

コンサルタントであれば、(当たり前ではあるものの)過去に取り組んだテーマの深掘りをした方がいいし、そのテーマの周辺テーマまでナレッジを広げた方がいいと思っている。人事など機能特化でサービスを提供している場合はやや異なるかもしれないが、様々なテーマを扱うことが多いという仕事の特性上、働いている時間外でどれだけナレッジを仕入れることができるかも非常に重要である。

他にも、例えば営業の人であれば自社のやり方はOJTで学べるが、他社はどうやっているのか、最新の営業のトレンドはなにか、といったことを業務時間外で学ぶのは非常に有用であると思う。IT活用の事業運営上の重要性が高まっていることを踏まえると、なおさらではないか。

もちろん、労働時間を短縮することによって家族と過ごす時間を増やすことも人生にとって極めてクルーシャルなことと思う。

 

やや話が脱線したが、働き方改革、ここで言及している労働時間の短縮が話題にのぼると必ずと言っていいほど聴こえてくるのが「若いうちは買ってでも苦労しろ、若いうちは働いてナンボだ」といった意見である。

職業人としての早い段階で能力開発が行われ競争相手よりも有能と見られれば、その分チャンスが与えられ、より成長する機会を得ることができ、競争相手との差分をより広げることが可能である。複利のように効いてくる訳であり、若いうちにガバッと成長することは、年を取れば取るほど意味を持ってくる。そのため、私も基本的には同じように思っている。

 

しかしながら、前述のように長い労働時間は長期的な観点から避けるべきであり、投入する時間にメリハリをつける必要が出てくる。

 

耳にすることがしばしあるが「自分も昔は朝までよく働いてたから」というレベル感の議論で今の若い人も長く働くことを推奨するのは、当然ながら頂けないと思う。

確かに、長い労働時間によってもたらされた成長があるのは事実である。しかしながら、長い労働時間は手段であり、必要とされるのは成長である。その成長が長い労働時間によってもたらされたことが、最適であったのか?ということを考える必要があるのではないか。

言い換えれば、必要とされる成長を達成するために、複数のオプションを検討した結果、長い労働時間が最適であるということが最もらしい場合においてのみ、長い労働時間という手段を取ることがベリファイされるはずである。

 

つまるところ、各メンバーのあるべき姿を適切に定義し、現状とのギャップを把握、そのギャップのうち外的なリソース(先輩や多部署等からのナレッジトランスファーや外部研修など)により補完できるようなものと、ある程度経験が必要そうなもの=短期間で成長するには労働時間がある程度長くなることも求められうるもの、に分けていくことが必須となる。

 

このように書くと、問題解決の基本的なことを述べているだけのように見えるが、これらを一連の動作としてしっかりと定義して実行に移すことは容易ではないと思う。

 

働き方改革により労働時間の短縮が求められているものの、働く方としては「これは他の人をうまく頼れば、すぐキャッチアップできる」ものと「これは経験値が必要だから、辛くても歯をくいしばる」ものを自分で考えて区分けした上で自らのリソース配分をコントロールしつつ自己成長を図っていくことが、よりシビアに求められてきているように見える。